目次
1. 米政府閉鎖とは?
アメリカの会計年度は毎年9月30日で終了します。新年度(10月1日〜)に入る前に、議会で予算案や暫定予算(CR)が可決されないと政府機関は資金切れとなり、業務を停止せざるを得ません。これが「政府閉鎖(shutdown)」です。
2. 過去の事例と政権ごとの違い
- トランプ政権(第1期:2017〜2021)
2018年1月:3日間閉鎖
2018年2月:数時間閉鎖
2018年12月〜2019年1月:35日間閉鎖(史上最長) - バイデン政権(2021〜2025)
閉鎖は一度もなし。2021年、2023年、2024年に閉鎖寸前まで行ったが、すべて暫定予算で回避。 - トランプ政権(第2期:2025〜)
現在、再び閉鎖危機。もし発生すれば通算4回目。
3. 閉鎖で止まるもの・続くもの
- 止まるもの
国立公園や博物館、雇用統計などの経済データ発表、航空安全検査、医療研究など。過去には自由の女神も閉鎖されたことがある。 - 続くもの
国防・治安・緊急対応は継続。ただし職員は無給勤務の可能性あり。年金や医療保険といった義務的支出も継続。
4. 今回(2025年)の特徴
- 期限:9月30日。閉鎖が起きれば10月1日から発生。
- 賭けサイトでは閉鎖の可能性が80%超との見方が強い。
- 閉鎖となれば、10月3日の雇用統計が延期される見通し。さらに10月15日のCPI(消費者物価指数)にも影響が及ぶ可能性。
- 経済指標の欠落はFRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策判断を難しくし、金融市場の不透明感を高める。
- 混乱が長引けば、与野党ともに国民からの批判が強まり、妥協が模索される可能性が高い。
5. 金融市場への影響
5-1. 閉鎖が「発生」した場合
- ドル円:ドル安・円高に振れやすい
- ゴールド:安全資産買いで上昇
- 米株式:短期的に売られやすい(特に政府契約関連銘柄)
- 米国債:乱高下。長期化すれば金利低下し、ドル安圧力に
5-2. 閉鎖が「回避」された場合
- ドル円:安心感からドル高・円安方向へ
- ゴールド:安全資産需要が剥落し下落
- 米株式:リスクオンで株高
- 米国債:売られて金利上昇
6. 初心者向けまとめ
政府閉鎖とは「予算が通らず、国の一部機関がストップする事態」。
トランプ第1期では3回発生、バイデン政権ではゼロ(すべて回避)、そして今また第2期トランプ政権で危機が迫っている。
2025年の閉鎖が発生すれば、雇用統計やCPIの発表が止まり、FRBの政策判断も難しくなる。市場は「ドル安・株安・金高」といったリスク回避の動きが強まり、長期化すればアメリカ経済に打撃となり世界市場へ波及する。逆に回避されれば「ドル高・株高・金安」とリスクオンに振れやすい。
7. 投資家への注意点
- 短期トレード:閉鎖発生ならドル円は円高方向、ゴールドは買いが入りやすい。回避ならドル円は円安、ゴールドは下落の可能性。
- データ欠落リスク:雇用統計やCPIが発表されないと、相場は「材料難」で一方向に動きやすくなる。
- ニュースフロー重視:閉鎖の有無は直前まで分からず、ヘッドラインで相場が大きく振れるため、ポジション管理と損切りルールが重要。
8. 今回の学びポイント
- 政治イベントは相場を大きく揺らすが、必ずしも長期トレンドを決めるわけではない。
- データが出ない局面では「様子見」が最適解になる場合もある。
- 投資家にとっては「動かない勇気」も大切である。